膠原病内科日記

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【まとめ】皮膚白血球破砕性血管炎(Cutaneous Leukocytoclastic vasculitis)→Cutaneous IgM/IgG immune complex vasculitis

Leukocytoclastic vasculitis(LCV)はゴミ箱診断的によく日常診療で出会う。ただこれ自体が臨床で大きく問題になることは少なく、自然軽快することも少なくない。今回はこの血管炎についてIgA血管炎と比較も交えながらまとめていく。

 

▪️診断:

<生検>

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

・時期

最も生検に適した時期は病変出現後、48時間以内とされており、時期が悪いと特徴的な病変が得られないこともある。また時期によっても組織が異なり紫斑出現後24時間以内では核の断片化を伴う好中球浸潤に伴いフィブリノイド変性と周囲への出血が特徴的で、24時間以降好中球はマクロファージとリンパ球に置き換わり、48時間以上経過すると基礎となる血管炎の形態にかかわらずリンパ球に富んだ浸潤中心となる。衰退期のLCVでは核の断片化やフィブリノイド壊死は消失し単核球浸潤と血管外でのRBCの漏出が見られる。

①LCVの初期②③成熟期④衰退期

・深さ

皮膚血管炎は大型〜小型血管炎すべてで症状が出現しうる部位であり、主に血管炎の部位が診断に重要であるため生検が重要である。

詳細は画像後のキャプションに記載しております

LCV(上の図ではCLA)はIgA血管炎(上の図ではHSP)と同様に表在近くの血管のみが障害されることが多い。したがってshave biopsyでも診断可能であるが、あまり実臨床では行わないと思われる。日常で問題になるのはパンチか脂肪まで含めての切除生検かで、これは皮膚科にうまく指示する必要がある。つまり、AAVを疑っている場合にはパンチ生検でも診断可能であるが、PANも疑っている場合には脂肪を含めた生検が必要である。

・IF

IgA血管炎の除外のために必要である。一般的にIgG、IgM、C3が陽性になる。そのためrevised chapel hill分類2012では"Cutaneous IgM/IgG immune complex vasculitis"がLCVの大部分が分類されるとしており、ほぼLCVと同義である。

 

▪️臨床的特徴:

www.ncbi.nlm.nih.gov

・半数に背景疾患や全身疾患の関与が見られ、残りも通常は薬物や感染症により誘発される単一臓器皮膚SVVか特発性となる。

・薬物では抗生剤、主にβラクタム薬とNSAIDsが最も一般的とされる。他にはTNF阻害薬、RTX、TCZ、スタチン、ICIの関与もよく報告されている。

・血管炎は薬物や感染症に曝露してから7-10日後に発生する傾向にある。

・LCVでは主に下肢に触知可能な紫斑が出現する。痒みや焼灼感を伴うこともある。

 

▪️治療:

写真やイラストなどを保持する外部ファイル。オブジェクト名は 11739_2021_2688_Fig4_HTML.jpg

→大部分は3-4週間で自然軽快するため、対症療法がメインである。

・安静や下肢挙上、弾性ストッキング着用など

皮膚血管炎が重度の場合はステロイドも考慮する

・メンテナンスのオプションとしてコルヒチンも有用である。RCTでLCVの症状緩和に有用であることが示されている。

Colchicine in the treatment of cutaneous leukocytoclastic vasculitis. Results of a prospective, randomized controlled trial

・他はダプソンなど

・再発率は20%未満である。

 

★病態

www.frontiersin.org

IgA血管炎と出現しうる皮疹は似ているが、免疫複合体沈着の機序は異なっているとされている。

→すなわちIgA血管炎はIgA1におけるガラクトース欠損または低ガラクシド化*が血管上皮の低レベルに発現しているCD71や未知のIgA受容体と結合したり、血中のIgGやsCD89と結合し免疫複合体を形成することでサイズが大きくなり物理的に血管上皮に捕捉されることで好中球のFcRα1(CD89)と結合、好中球活性化を起こし血管壁を障害する2つの機序(IgA自体の構造、サイズ)があるのに対し、LCVではIgGやIgMは正常でただサイズの問題で血流が遅い血管壁周囲や乱流を起こしている血管の端で血管上皮に捕捉され、好中球のFcγRを介しIgG/IgM複合体と結合し活性化させる。

*ガラクトース欠損IgAはCD89やCD71と結合しやすくなる。そのため循環血中に存在する重合したIgAやIgAの免疫複合体が好中球のFcRα1(CD89)を架橋・刺激しプライミングされた状態になっていることもIgA血管炎の病態の一つと考えられている。完全な想像ではあるがLCVの場合、背景疾患や薬剤・感染症によって好中球が活性化されることがきっかけで発症するのだろう。

 

おそらくこのような機序の違いが臨床症状や治療反応性の差を生んでいると考えられ、実際にIgA血管炎とIgM/IgG immune complex vasculitisとの病理学的な差を検証した実験ではIgA血管炎の方がより多くの好中球浸潤と核の破砕、CD8、CD3陽性細胞浸潤を認め、IgA血管炎でより免疫抑制剤による治療を必要とした

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/cia2.12156

 

(コメント)

IgA血管炎とは病態の機序が異なるため診断をきちんとつける必要がある。逆にLCVの診断をつけられれば無駄な免疫抑制剤での治療を控えられるだろう。