好酸球性肉芽腫性血管炎(EGPA)の患者に稀ではあるが治療中に肝機能障害を認め、EGPAによるものか薬剤によるものか判断に苦慮する場合がある。
現時点でのEGPAにおける肝障害のエビデンスをまとめる。
①EGPAによる肝炎
EGPA既往がある66歳女性。EGPAの診断はなされていたが治療は受けていなかった。肺炎で入院した際に肝硬変が疑われ肝生検を施行され、好酸球の高度浸潤と肉芽腫を伴う血管炎を認めEGPAに伴う肝障害と診断された。AIHを示唆する抗体はp-ANCA、MPO-ANCA、平滑筋抗体、RF陽性以外はなかった。
ANCA関連血管炎の肝障害に関して調査した研究でもEGPAでは活動期に肝機能異常を示した症例はなかった。
一方でAAVでは血管炎の種類に関係なく肝臓の線維化が経過中21%に見られるという報告もあり血管炎自体が肝臓に影響している可能性は示唆されている。
好酸球浸潤が肝生検で確認された328人の患者の推定病因について検討した研究では2%でEGPAと診断されていた。
②血栓症
20歳女性。呼吸困難感と四肢の痺れで入院、EGPAの診断で加療されたが治療途中でdrop outした。その後再燃し、入院時の検査で血小板減少と肝不全、Dダイマー高値を認め造影CTで門脈血栓を疑う造影不良を認め、EGPAに伴う門脈血栓と診断された。
この症例を含めると3例目の報告である。
③AIHとの合併
喘息や副鼻腔炎・多発神経障害の既往が吐き気と嘔吐で受診した40歳女性。血液検査で鬱滞性肝障害を認め、ANA(1:640 homo)・平滑筋抗体旺盛であったため肝生検を施行、活動性の慢性肝炎を認め自己免疫性肝炎の診断となった。また、血液検査で好酸球増多を認め、MPO-ANCA陽性であったことも血管炎の病理は得られなかったがEGPAと診断された。
喘息・慢性副鼻腔炎の既往があり、16歳の時にAIHと診断された27歳男性が上腹部痛で入院、胆嚢炎があったので胆嚢摘出を受けた。病理で好酸球の高度浸潤を認め門脈周囲の血管炎所見も認め、AIH診断時の肝生検で同様の所見を認めなかったため(ANCA陰性)EGPAの診断となった。
④Mepolizumabによる肝障害
MIRRA trialでは肝障害の症例はなかった様だが、2021年に発表されたEGPAに対するMepolizumabの多施設研究では191人のEGPA患者のうち1例のみ肝炎が報告されている。Mepolizumabで肝炎が起こるのは非常に稀と考える。
アザチオプリンによるものは割愛。