膠原病内科日記

膠原病・不明熱・間質性肺炎に関して勉強します。X:https://x.com/rheumafuoild/

【まとめ】コカイン誘発性血管炎

コカイン誘発性の血管炎には大きく2種類が報告されており
cocaine-induced midline destructive lesion
②ANCA血管炎
がある。
 
②に関しては厳密にはコカイン製剤に含まれることもあるレバミゾールが原因と考えられている。しかし臨床的には厳密には区別は難しい。なぜならコカインは使用後48~72時間尿中に検出されるが、レバミゾールは半減期が短くレバミゾールの関連を証明するのは難しいことも多いからである。
 
上記2疾患に特徴的な症状や検査に関して記載する。
===============================================================
①Cocaine-induced midline destructive lesion(CIMDL)
コカイン自体の血管収縮作用によって鼻中隔軟骨の虚血性壊死と穿孔を誘発し、上気道のGPAを模するタイプ
 
・UKで行われた5年間の研究では42人のCIMDL患者が含まれた。
症状:
30人に中隔穿孔の所見があった。さらに6人では口腔鼻腔婁をみとめた。12人に皮膚病変や関節痛などの全身症状を認めた。
検査(抗体):
40人(92.9%)でELISA/IIFでのANCAが陽性となった。24人(56%)でELISAのPR3-ANCAが陽性となり、MPO-ANCAは陽性となる患者はいなかった。28人はIIFでANCAが陽性となり、11人がcANCA、12人がpANCA、3人がcANCAとpANCAが陽性となった。ELISAでPR3-ANCAが陽性となった9人にIIFでもpANCAが陽性となった。4人のPR3ANCA陽性患者ではc-ANCA/p-ANCAが両方とも陽性となった。
検査(生検):
28人で副鼻腔の生検を受け、肉芽腫性炎症の所見のないものはなかったが2人で血管炎も示した。

 
・1991~1999年の18人の連続したCIMDLの患者を集めた研究で同じ時期にGPAと診断された21人患者と臨床情報を比較した。
症状:
CIMDLではGPAよりもさまざまな領域に病変が出現し、破壊が強いことが明らかになった。

検査(抗体):

CIMDLで陽性となったpANCAのうち4つがPR3と反応を示し、3人がヒト好中球エラスターぜ(HNE)に、2人が両方に反応を示した。(GPAでHNEに反応を示した患者はいなかった)

 

検査(生検):
生検ではLCVとフィブリノイド壊死はGPAでより好発する傾向にあったが、両者で見られたため鑑別に有用ではなかった。

 

 
=======================================
②レバミゾール誘発性ANCA関連血管炎
MPO/PR3 ANCAが陽性となり皮膚所見や関節痛など全身性の血管様症状を呈するタイプ。
 
レバミゾールはもともと抗蠕虫薬として開発され販売されてたが免疫調整作用があることもわかっていたが好中球減少の副作用があり、一般的では無くなった。そのレバミゾールが添加されるとMAOやCOMTの阻害作用で興奮作用を増強し、カテコラミンの再取り込みを亢進させる作用がある。また街頭で行われる"bleach test"にレバミゾールも反応するため、見かけの純度を低下させることなくコカインの重量を増加させることができる。2009年に行われた米国の研究では70%に混入していた。
 
・レバミゾールはM3ムスカリン作動性アセチルコリン受容体を介して好中球を活性化させ、NETosisを引き起こし自己抗体産生を引き起こす。
・レバミゾールはPTUと同様MPOに交差反応を示す基質があるともされている。

by.Trojan horses: drug culprits associated with antineutrophil cytoplasmic autoantibody (ANCA) vasculitis

免疫抑制剤を使用せずとも、コカイン/レバミゾールを中止することで2~14ヶ月以内に自己抗体レベルが正常化することが示唆されている。
 
・MGHで行われら30人のANCA陽性コカイン誘発性血管炎の患者が同定された研究では18人の患者で検査データなどを抽出することができた。
症状:
耳の紫斑(5人)が特徴的。他の症状としては壊死性病変(3人)や水疱性病変(1人)があり、全身症状としては発熱(8人)、関節痛(15人)を認め全体の75%に全身症状を認めていた報告がある。また好中球減少も特徴的で28%に認めた。腎炎は多くないが、1例で半月体形成型糸球体腎炎の報告もあった。
検査(抗体):
ANCAとしてはMPO-ANCAが100%でPR3-ANCAは50%で陽性であった。

 

 

 
*皮疹の例:

 

 
・治療に関しては支持療法(休薬で2~3週で改善する)ではあるが、炎症反応の高い場合や関節痛の強い場合、血管炎の証明がある場合にはステロイド加療が行われることもある。
 
(コメント)
都内などを除いて日本においては実際にコカイン誘発性の血管炎を見る頻度はそう多くはないと思うが、備えておきたい。
 
参考文献:
特に引用の記載のない文章はCocaine-Induced Vasculitis - PMCを参考に作成した。