膠原病内科日記

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【まとめ】低ALP血症の鑑別

CPPDの原因として低ホスファターゼ血症が知られている。
今回低ALP血症を伴う偽痛風を経験したので、低ALP血症についてまとめた。
 
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・ALPはアルカリ性(至適PH=10・・・血液中では不活化)の環境でリン酸モノエステルを加水分解する酵素
・ほとんどの臓器に分布しているが、特に肝臓、骨(骨芽細胞)、小腸粘膜上皮、胎盤などに多い
・主な役割として①骨形成②腸からの脂肪輸送がある
 
ALP低下の原因として以下の疾患が知られている

 
・ALPでは2つのMgと4つのZnがそれぞれ活性化部位を担っている
・完全に活性化された天然型ALPは(ZnAZnBMgC)2 enzymeと呼ばれる→活性化の際にMgやZnが必要
・実際に低Mg、低Znの患者でALP低下が認められている

Low Alkaline Phosphatase (ALP) In Adult Population an Indicator of Zinc (Zn) and Magnesium (Mg) Deficiency

 
・本邦の亜鉛欠乏症の診療指針2018でも亜鉛欠乏症の診断基準の一つとしてALP低下が含まれている

マグネシウムの低下は痛風を起こしうるため注意が必要である

 

 
甲状腺機能低下
・in vitroの研究でT3が骨芽細胞のALPを活性化させることを示した=甲状腺機能亢進症で上昇する
甲状腺機能低下とLFTを調べた研究ではALPは有意差を認めなかった
 
ビタミンC
・vitC低下でALP活性低下が引き起こされる豚の実験
 
骨髄腫
・溶骨性病変であり、骨芽細胞が増えないためALP上昇しないのが特徴
・二次性の骨折などで上昇することもある
(参考:異常値の出るメカニズム 第2版)
・MMのALPにフォーカスした研究では正常をとることが多かった
 
低ホスファターゼ症(Hypophosphatasia=HPP)
・ヒトには4つのALP遺伝子(ALPL、ALPI、ALPP、ALPG)が存在
ALPLがコードする組織非特異型ALP(Tissue non-specific ALP=TNSALP)は肝臓・腎臓・骨に多く発現し、組織特異的な糖鎖付加による翻訳後修飾で肝臓型ALPや骨型ALPになる
ALPIは小腸型、ALPP胎盤型、ALPGは胚細胞型ALPをコードしている
 
・HPPではALPLの異常が原因でTNSALP活性が低下し、ピロリン酸が分解されずに体内に蓄積する→石灰沈着

(参考)

異常値の出るメカニズム 第2版
 
・HPPは発症年齢や重症度に幅があり、通常、「周産期重症型」「周産期良性型」「乳児型」「小児型」「成人型」「歯限局型」の6病型に分類

 
・成人型低ホスファターゼ血症は以下のような特徴を持つ
 ・小児HPPより軽症では異質性が高い
 ・受診時には2/3に症状があり、主に筋骨格系の痛みと骨折を訴える
 ・成人HPPの40~55%に骨折の既往歴があり、1/3では複数回の骨折歴がある
 ・最も多い部位は足(中足骨疲労骨折など)や大腿骨だが、どの部位でも良い
 ・骨折は治りが悪く、再発の可能性がある
 ・骨密度は低い、正常、高い全ての場合がありうる
 ・歯の早期喪失は一般的な特徴
 ・骨軟化症の病歴がある
 ・成人HPPの10~25%に関節周囲や軟骨への石灰沈着を認める
 ・痛風は5~15%で観察される可能性がある

Hypophosphatasia - PMC



・実際にCalcific periarthritisが唯一の症状であった低ホスファターゼ血症の報告もある

 
(コメント)
二次性の低ALP血症で偽痛風まで起こすかはわからないが、マグネシウム欠乏との複合でCPPD沈着症を起こしてもいいだろう。二次性のCPPD症には注目していきたい。