流行性筋痛症は現在、主に3つのタイプが報告されている。
いずれも原因になるウィルスはエンテロウィルス属に属するウィルスであるため頭痛、咽頭痛や食欲低下や吐き気などの消化器症状、発熱を伴う。咽頭ぬぐい液、血清、便中にウィルスが検出されることが診断に有用。また夏季に流行しやすく、子供などsick contactがあることが多い。治療はいずれにせよ対症療法であるので他疾患をしっかりと除外するのが重要。
①体幹部優位
いわゆるBornholm diseaseと言われているようなタイプの流行性筋痛症。コクサッキーBが主な原因Virusであると考えられている。
痛みの機序として筋のスパズムによるものが考えられており、全身に筋痛が起こりうるが特に発作性胸部(胸壁の筋)・上腹部(横隔膜)の激しい痛みが特徴で、killer chest painなど急性胸痛や心膜炎・胸膜炎の鑑別となる。
以下はBornholm病のまとまった症例報告から。
症状としては筋肉の痛みや熱を高い頻度で合併し、消化器症状も出現する。稀な症状では羞明や眼球運動時痛、めまいなどの報告がある。
好発年齢は15歳と30-35歳の二峰性のピーク(6ヶ月〜76歳)。
男女比はほぼ1:1。
治療は対症療法で5日以内に50%は改善し14日以内に90%改善する。
②頸部優位
原因Virusは同定されていないが1941年には報告されていた亜型。
日本からの報告ではコクサッキーAに関連した頸部と四肢を中心とした流行性筋痛症様症状が報告されている。
stiff neckを伴うため無菌性髄膜炎やクランデンスなどと間違わない様にしたい。
https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/pdf/03301/033010015.pdf
③四肢優位
ヒトパレコウィルス3型(HpeV3)が原因Virusと考えられている。
日本からの報告が多く、四肢の近位筋優位の筋痛、握力低下を特徴とする亜型。理由は不明だが圧倒的に男性に多い。
筋炎やギランバレーとの鑑別になる。睾丸痛の報告もありPANなども想起させる。
MRIでは筋膜や筋肉に高信号を認めることもある。
四肢優位の流行性筋痛症の鑑別に関してその特徴をまとめた図もある(上記の論文より作成)。
特にギランバレーは予後が異なるため、髄液検査などを行い見逃さないようにしたい。