膠原病内科日記

膠原病・不明熱・間質性肺炎に関して勉強します。X:https://x.com/rheumafuoild/

Methotrexate Osteopathy

methotrexate(MTX;メトトレキサート) osteopathyは骨芽細胞機能異常(低い骨形成と高い骨吸収)に伴う臨床的には成長版に沿った帯状の疲労骨折のことを指している。もともとALLに対する高容量MTXで1970年に初め報告されたが、最近ではリウマチ性疾患に対する低容量(≦25mg/週)MTXにおいても報告がある。Xpでははっきりせず、MRIをとって初めて発覚することもあり、臨床的に関節炎との鑑別で重要な病態。
------------------------------------------------------------------------------------
ドイツで行われた2016年~2018年の間の後ろ向き研究で、足に痛みがあるが外傷歴のない患者の足または足首のMRI 1750 件を分析した
 
→1145人(65%)は自己免疫性疾患で483人が炎症性リウマチ性疾患(RA;42.2%、PsA;22.4%、axSpA;11.1%)を患っており、87人がCTD、64人が炎症性関節炎、40人がPMR、39人がサルコイドーシスなどであった。その他は機械的疾患または変性疾患(329人)、または線維筋痛症(228人)を患っていた。
 
結果:
・不全骨折は炎症性リウマチ性疾患を患っている患者の9.1%(104人)、炎症性リウマチ性疾患を患っていない患者の4.1%に起こった。
・関節リウマチの11.4%に不全骨折があった。
・不全骨折患者の44%は複数の骨折を起こしていた。
・中足骨が最も多く(n=60 51.7%)、踵骨、距骨、楔状骨、立方骨も一般的であった。
・不全骨折患者の74%は MRI 検査の前に X 線検査を受けたが、X 線で検出された骨折は25%のみであった。

 

・不全骨折の危険因子として骨粗鬆症、喫煙、過去の骨折、MTX骨粗鬆症治療などがあった。
ビタミンDの中央値は不全骨折がない群でむしろ低かった(31.0ng/mL vs 25.0ng/mL)。
 
→リウマチ性疾患において不全骨折が起きることが問題となるが、MTXがリスクとして挙げられている。
 
-----------------------------------------------------------------------------------
MTX osteopathyによる疲労骨折を伴う成人自己免疫性疾患患者80名を記載した32件の研究(~2021/7/8)からデータを抽出。
 
臨床的特徴:
・elderly womenに多い(女性 83.3%・骨折の平均発症年齢は65.4歳、平均罹患期間は14.8年)。
72.5%がRAに対するMTX。他はPsAやSLE、SSc、PAN、ASでも合併した。

・ほとんどがストレス骨折(95%)で発症したが5%の患者でMTSS(内側脛骨ストレス症候群)が起こった。骨折は遠位の脛骨(51.3%)、踵骨(35.0%)、近位の脛骨(27.5%)に頻繁に発生した。患者の半数以上(55%)が両側骨折で、25%で再発性であった。

 
併用薬:
・20%はステロイド治療をうけたおらず、別の28.8%の患者は骨折の3年以内にステロイド加療を受けていなかった。
検査異常:
・報告のあった約半数(22/52;43.1%)に25-OH D3<30mcg/L(75nmol/L)と定義されるビタミンD不足を示した。
・37.1%(17/46)でALP上昇を示した。
・18.2%(8/44)でPTHレベルの上昇を認めた。
治療:
・一貫していないがビスフォスホネートやPTHなどが使用された。
・骨折が治癒した患者では大部分(8/15)でMTXは中止されていたが、継続・中止に関しては定まったものはない(disucssionでは中止の推奨)
 
(コメント)
実際にリウマチ性疾患に合併する不全骨折は診断が難しい。特にMTXはリスクであるため身体的・血清的に活動性が良くても患者が痛みを訴える場合には一度MRIを撮像することも検討したい。