膠原病内科日記

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胸腺腫とSLE

胸腺腫には自己免疫性疾患が合併しやすいことが知られており、重症筋無力症や赤芽球婁、天疱瘡、筋炎、Isaacs症候群、Good症候群などが報告されているがSLEとの合併例も報告されている。
 
自己免疫性疾患を起こす機序として
①Escape theory→髄質で行われるNegative selectionを通過することができず適切な自己寛容のないT細胞が末梢に出現する。
②Genetic theory→胸腺腫の皮質でTCR再構成が行われ、抗原特異性を獲得するが胸腺腫では皮質胸腺細胞が増加しており、高い細胞増殖のため遺伝子変異の可能性が高まる。
が考えられている。
 
SLEと胸腺腫合併症例の特徴として37例の既存の報告(2005年~2011年の単施設での2例+2015年までに報告されたケース)を検討すると
・胸腺腫の患者の2-10%はSLEを発症する
・80%女性
・胸腺腫診断時の中央値は55歳(18-77歳)、SLE診断時は53歳(21-78歳)
・1/3は胸腺腫検出前(平均2年)に診断、1/3は同時期、1/3は胸腺腫の診断後(平均4年)に診断された。
・臨床像として関節炎(59%)、漿膜炎(38%)、皮膚(35%)の順に多い
・胸腺摘出後の経過に関して十分記載されているものでは5例で影響なく、6例で増悪、7人で改善した。
 
また単施設での14例の検討では
・胸腺腫診断と同時あるいは以前にSLEの診断を受けた9人のうち2人で胸腺摘出後のSLE増悪を認めた。
ANAは全例で陽性であったがdsDNA抗体は10/14例で陽性であった。
・3人が腎炎を合併し、5/14例で他の自己免疫性疾患を合併していた。
・1/3で免疫抑制剤が必要であった。
 
また古典的に胸腺摘出後にSLEを発症する例(2ヶ月~13年)も散見されており、胸腺腫の既往にも注意する必要がある。
 
高齢発症のSLEや他の自己免疫疾患の合併があれば積極的に胸腺腫の合併を検索する。また今日腺腫合併のSLEは関節炎の合併が多い。胸腺腫摘出後の増悪や発症にも注意が必要。