Lupus anticoagulant hypoprothrombinemia syndrome(LAHPS)は1960年にはじめて報告された後天性のプロトロンビン活性低下(通常10%以下)を伴うループスアンチコアグラント(LAC)陽性例でLAC陽性であるが出血症状を伴うことで知られている症候群である。小児のVirus感染に伴う一過性のLAHPSが多いと考えられていたが、近年成人例での報告も増えている。
2012年に報告された74人の患者をまとめたLiturature reviewでは
15歳以下が半数以上だが平均年齢は22.7歳(2-76歳まで診断)であり、ある程度成人発症例も含めれていることがわかる。
他にも
・女性が半数以上
・背景疾患としてSLE関連がほとんどで自己免疫性疾患で55%を締める
・その次に感染症が多い
・薬剤やリンパ腫に伴う症例の報告もある
ことがわかった。
また症状としては鼻血や紫斑など軽症なもの62%にみられ、51%の患者で重篤な臓器出血が見られた。同時に血栓症の症例も13%で見られ、LACや下記のAPL抗体によると思われる血栓傾向も起こしうる点も注意が必要である。
血液検査では88%に抗プロトロンビン抗体が陽性となり、疾患との関連が疑われている。また低PT活性だけではなくAPTTの延長もみられ、カルジオリピン抗体やβ2GPⅠも70%程度陽性となった。
治療に関してはステロイドが第1選択薬で使用され、開始量の中央値は60mg/日であった。治療経過の記載のある患者のうち69%でPTとF2活性の正常化を認めたが、22%ではPTは正常化しF2の正常化はできなかった。11%では両方とも正常化することができなかった。他の免疫抑制剤としてAZAやCYC、RTX、IVIG、PEなどが報告されている。
支持療法も並行して行われ、輸血が含まれていたがFFP輸血は16人中6人でF2レベルの改善を認めなかった。
また日本から単施設研究で、2014年から2016年の3年間に20例のLAHPS症例を経験しそれをまとめて報告した研究があるが、
こちらも上記のLRと似たような結果となっている。*出血症状があったのは4人(20%)のみのため、典型的なLAHPSだけでなくLAC陽性でFⅡ活性低下している症例も多く含まれている
特筆すべきは診断時の年齢の中央値が41歳であったことで、日本においても高齢発症のLAHPSが一定数存在していることだと思う。またプロトロンビン抗体は55%に陽性で、PS/PT抗体に関しては40%陽性であった。
(まとめ)
LAC陽性で出血傾向をきたす疾患=LAHPSがあることを忘れないようにしたい。LAHPSは成人でも発症し、またLAHPS状態においても血栓は起こりうるのでそこも合わせて注意したい。