皮膚筋炎において主にMDA-5抗体が陽性となる"筋症状のない"皮膚筋炎(ADM:amyopathic dermatomyositis)は合併する肺疾患の病勢の強さから広く認知されているが、最近になってNXP-2抗体が陽性となる"皮膚症状のない"皮膚筋炎(DMSD:Dermatomyositis Sine Dermatitis)が注目されている。
<Dermatomyositis Sine Dermatitis>
*DMにおいてMxA陽性はSn71%、Sp98%であった(34人中24人陽性)。他疾患ではASMでは1%、IMNMでも1%、PM、IBMでは0%陽性となった。*TIF1γ、Mi2、MDA5(ELISA)、NXP2、SAE(WB)陽性のDM/PM患者の筋生検でMxAが100%陽性となった。他の病理所見として42%にperifascicular atrophyを認め、51%に筋膜周囲にMHC class1の発現、83%に毛細血管のMAC沈着を認めた。
DMSDの診断は"筋生検時に発疹(典型的皮疹:ゴットロン・ヘリオトロープ・ショールサイン・Vネックサイン・爪囲紅斑+その他の皮疹:爪床出血、脂漏性湿疹、蝶形紅斑など)が存在しないこと"と定義された。
→182人のうち14人(8%)がDMSDと診断された。
頸部伸筋優位の筋障害を生じた抗nuclear matrix protein 2抗体陽性皮膚筋炎の1例
<背景>
DMSDという疾患概念が生まれた背景には皮膚筋炎(DM)の病態理解が進んだことが進み、液性免疫による血管内皮障害によりDMが引き起こされる「血管説」から、DM患者において1型インターフェロン誘導遺伝子が過剰発現しており1型インターフェロンによりDMが引き起こされるとする「インターフェロン説」が主流になったことに起因する。特に2017年に1型インターフェロン誘導タンパクの1つであるMxA(myxovirus resistance protein A)がDM特異的に筋組織で発現していることが報告され、MxA陽性≒DMと考えることができる様になった。そのため皮膚に症状がなくても筋生検でMxAが陽性となり病態的にはDMと考えられる疾患群としてDMSDが報告されている。
(参考:炎症性筋疾患の診断と治療:update 2021)
またDMSDは一見すると多発筋炎(PM)の様にも思われるが、PMに関しては最近では病理学的な分類ではかなり稀な疾患とされており、実際にフランスから報告された研究ではPM、DM、IBMの患者で臨床症状などでクラスター解析を行ったところDM、ARS症候群、IMNM、IBMに一致するような4つのサブグループに分類できた。