膠原病内科日記

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VEXASの診断に有用な空砲の数は?

VEXAS症候群はVacuoles, E1 enzyme, X-linked, Autoinflammatory, Somaticの略で2020年に初めてNEJMに報告された。骨髄スメアで好中球や赤血球の前駆細胞に空砲がみられることが特徴的な疾患であるが、空砲自体はMDSや感染症急性期にもみられることがあり、VEXASにおいてどのくらいの空砲があれば診断に有用かは不明であった。

今回2023年2月に空砲数に関する研究が報告されたため紹介する。

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

2020/12から2022/3までにリヨン大学にUBA1変異同定のために紹介となった患者が研究に含まれた。17人のUBA1変異+の患者と15人のWTの患者を異なる3つの病院の4人の病理学者が骨髄スメアの初期好中球前駆細胞(骨髄芽球および前骨髄球)、後期好中球前駆細胞(骨髄球および後骨髄球)、初期赤血球前駆細胞(前赤芽球および好塩基性赤芽球)における空胞を有する細胞とその空砲数に関してカウントした。

①空砲を持つ細胞の割合

初期好中球前駆細胞(UBA1+ vs WT=35% vs 14%)と初期赤血球前駆細胞(25% vs 6%)より成熟した細胞にほとんど空砲を有する細胞はなく有意差はなかった(3%以下)。

先行研究で示された空砲を持つ初期好中球前駆細胞の割合が10%未満のVEXASは存在しなかったというCut off値を使用すると、感度100%・特異度47%であった。

Vacuoles in neutrophil precursors in VEXAS syndrome: diagnostic performances and threshold

 

②空砲を持つ細胞内の空砲の数

初期好中球前駆細胞(UBA1+ vs WT=平均6.5 vs 2.9)と初期赤血球前駆細胞(5.8 vs 2.7)と有意差を持って多かった。ただし細胞の中の空砲の数はばらつきが多く、測定のために必要な時間も多かった。

写真、イラストなどを保持する外部ファイル。オブジェクト名は hs9-7-e828-g001.jpg

③診断に有用なCut offは?

初期赤血球前駆細胞と初期好中球前駆細胞の割合をプロットしCut off値を求めた。

 

→VacEP>-0.5x(VacEN)+20

VacEPは初期赤血球前駆細胞の%、VacENは初期好中球前駆細胞

(コメント)

VEXASを診断するときに空砲数は細胞ごとのばらつきもあり、それ自体で診断に直結することはなさそう。ただ平均値で有意差を持ってUBA1変異を持つ患者では空砲数が増加しており、初期前駆細胞平均6個程度見えればVEXASらしいと言えるか?

さらに空砲を持つ細胞自体の割合も重要で、10%を下回っていた場合VEXASとは言い難いと思われる。VEXASの場合は平均で20-30%程度は空砲を持つ初期前駆細胞があると思われる。