膠原病内科日記

膠原病・不明熱・間質性肺炎に関して勉強します。X:https://x.com/rheumafuoild/

セントロメア抗体陽性の間質性肺炎

セントロメア抗体は昔から限局皮膚硬化型全身性強皮症のマーカーとして知られており、特徴的な症状を示すものはCREST症候群と呼ばれてきた。一方で間質性肺炎は起こしにくいとされている。今回セントロメア抗体陽性強皮症の間質性肺炎に関して深掘りしていく。

 

>セントロメア抗体陽性は従来間質性肺炎(特に肺の線維化)に対してはProtectiveな因子であることが知られている(Arthritis Rheumatol. 2014 Jun;66(6):1625-35.)

上記の点数の合計スコア=negative:unlikely(1%), 0-1:Low risk(16%), 2:Moderate(31%), ≧3:High(60%)

 

>東アジアで出された強皮症研究のメタ解析でも同様にセントロメア抗体陽性は間質性肺炎罹患に対してOR=0.14とかなり保護的な因子であることが示されている(Int J Rheum Dis. 2021 Dec;24(12):1449-1459. )。

*Zhengの研究は21人のILD患者のうち6人がセントロメア陽性でかなり偏った研究と思われる(そもそも強皮症でCalpainの濃度上昇がHMGB1レベルと関係していることを示した研究であるため)

 

>とはいえセントメア抗体陽性強皮症において16%程度間質性肺炎が合併していることが報告されており、全く起こらないわけではない。

 

>2023年に発表された最も大規模なRetrospectiveな研究では2007-2018で480人の2013年ACR criteria/CREST≧3のセントロメア抗体陽性強皮症患者の間質性肺炎合併例に関して報告されており、

・99/480人に間質性変化を認め、5人が臨床的UIP、7人が病理学的UIP、28人がNSIP、14人がHP、6人がLIP、2人がOPを呈していた。

・SS-A陽性がILDを持つ患者で有意に多かった(15/72=21% vs 43/340=13% P=0.05)。

・ILDの患者は高齢で診断された(62歳 vs 56歳)。

レイノー現象の発症も高齢であった(55歳 vs 44歳)。

・ILD患者の51%で6年以内に進行を認めた。UIP/NSIPと他のILDは進行スピードに差はなかった。

高齢発症のレイノー現象と強皮症SS-A陽性が高リスクであるためHRCTでのILD検出のスクリーニングが推奨されている。また低リスク群に関しても定期的なHRCT検査の必要性を述べている。

ard.bmj.com

 

>さらにセントロメア陽性でもびまん性皮膚硬化型全身性強皮症を発症する症例もあり、そういった患者では限局型よりも間質性肺炎を併発しやすいが、非セントロメア抗体陽性のびまん性皮膚硬化型全身性強皮症より低いことがわかっている。

Distinctive clinical phenotype of anti-centromere antibody-positive diffuse systemic sclerosis

 

>また先日報告されたRheumatologyの"Effects of nintedanib in patients with limited cutaneous systemic sclerosis and interstitial lung disease"でも10%もセントロメア抗体陽性のILDが含まれているように、TopoⅠやびまん皮膚硬化型全身性強皮症ほどではないがNinredanibの効果はありそうな間質性肺炎があり注意して観察していきたい。

(まとめ)

セントロメア抗体は間質性肺炎に対して保護的な因子であるが、10%程度は間質性肺炎が見られ、特に高齢発症・SS-A陽性・びまん皮膚硬化型に多い。