今回、MDA5抗体陽性皮膚筋炎の一部で見られる急速進行性間質性肺炎(RPILD;Rapidly progressive interstitial lung disease)と、肺線維症(IPF)の急性増悪におけるフェリチン値という一つの指標に焦点を当ててみます。
フェリチンは一般的に体内の鉄貯蔵量を示すマーカーとして知られていますが、それは同時に慢性疾患、感染症、そして特に今回の議論の中心である自己免疫疾患の活動性を示す指標ともなり得ます。特にMDA5抗体陽性皮膚筋炎に伴うRPILDにおいてフェリチン高値はhigh riskであることが知られています(Gono et al. Rheumatology (Oxford) 2010)。
一方でIPFの急性増悪によってもフェリチンの上昇する患者も散見され、鑑別上問題になる症例も多いです。
今まで発表された文献からフェリチンの値を比較してみると
22589330=Gono et al. Rheumatology (Oxford) 2012
29873202=Enomoto et al. Clin Respir J 2018
とMDA5抗体陽性皮膚筋炎と同程度フェリチンが上昇していることがわかります。
他の膠原病に目を向けるとARS抗体陽性のRPILDでもフェリチンの上昇があります。
また非定型肺炎でもフェリチンが上昇することが知られており
Open Forum Infect Dis. 2021 Feb 18;8(4):ofab082
フェリチンの値自体はあまり鑑別の参考にはならなそうです。
臨床上、MAD5抗体陽性の皮膚筋炎は皮疹など明らかにIPFや通常の感染症とは異なる所見があるので、フェリチンの値のみにとらわれず、ベッドサイドで強いケブネル現象を示唆するinverse gottron papulesやvasculopathyを示唆する圧痛を伴う手掌・足底の丘疹や潰瘍を探しにいきましょう!
また、MDA5抗体陽性皮膚筋炎はOPやNSIPの画像所見を呈することが多い(Chen et al. RMD Open 2023)ので、過去のCTを見て背景肺を確認したり、UIPを示唆するhoney combなどの構造改変を呈する所見がないかを確認するのも大切と考えます。
Take home message
→直接比較した研究はないものもフェリチンのみでMDA5抗体陽性RPILDとIPF急性増悪の鑑別は難しい。