強皮症の皮膚病変に対するエビデンスは限られている。今回は強皮症の皮膚病変に対するステロイドの有用性をまとめる。
日本では日本皮膚科学会の全身性強皮症ガイドラインにステロイド加療に関する記載があり、
CQ3:
治療の対象となる SSc 患者に対して,プレドニゾロン(PSL)20~30 mg/日を初期量の目安として投与する.初期量を 2~4 週続けて,皮膚硬化の改善の程度をモニターしながら,その後 2 週~数カ月ごとに約 10%ずつゆっくり減量し,5 mg/日程度を当面の維持量とする.皮膚硬化の進展が長期間止まる,あるいは 萎縮期に入ったと考えられれば中止してよい
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/126101831.pdf
と書かれている。
その参考文献は日本の後ろ向き研究(1995-2000 @ 金沢大学)で
P:皮膚硬化が2年以内のdSSc+臨床的浮腫期+6ヶ月以内にmRSS ≧6pointの上昇
I: PSL20mg/day x2-8w→臨床的に改善したら2-6ヶ月おきに2.5mgづつtaper
維持量は2.5-10mg/day
C:なし
O:mRSSの変化量
というセッティングで、
TSSは有意差を持って改善した。
その中で腎クリーゼの患者は1人もおらず安全性も確認された。
治療反応の内訳を見ても全く反応性がない患者は9%であり、半数以上は50%以上の皮膚硬化の改善を認めた。
その中で2023年に早期の全身性強皮症に対する新しいエビデンスがRCTで登場した。
UKで行われた非盲検(はじめは二重盲検であったがコロナの影響で非盲検に)のRCT。
P: 発症3年以内の18歳以上のdcScc *eGFR<40や治療抵抗性のHTなどは除外
I: ~0.3mg/kg/dayを半年間投与
C: プラセボ
O: Co-primary outcomeは3ヶ月時点のHAQ-DIとmRSSの調節された差
→
2017/12/15-2020/3/23が二重盲検term: 25人がランダマイズ(13人がPSL群)
2020/8/11-2021/1/31が非盲検化term: 10人が登録(4人がPSL群)
ベースラインは54歳で男女比は1:1、発症平均1.7年の患者層で、TopoⅠが31%・polyⅢが40%、平均mTSSは21.2で、CRPは1.2mg/dLだった。
→Outcome
HAQ-DIは-0.10(95%CI -0.29~0.10 P=0.254)
mTSSは-3.90(95%CI -8.83~1.03 P=0.070)
結果的にステロイド群ではプラセボと比較しHAQ、Skin scoreともに統計学的に有意な差を示すことはできなかったが、ステロイド投与群で一貫したmTSSの低下傾向を示し、また先行文献で示された臨床的な重要なskin scoreの差とされるmRSS-5を信頼区間内に含んでいたため臨床的には有用と言える結果となった。
研究中に腎クリーぜの患者はいなかったということで安全性も確認できた。
(まとめ)
強皮症の早期の皮膚病変に対しては比較的安全に少量ステロイドは投与可能であるが実臨床ではおっかなびっくり入れてみるというのが率直なところ。
より高用量のステロイドが必要な間質性肺炎に対するエビデンスも蓄積が期待される。
参考:
強皮症腎クリーゼのリスク
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1568997223000642