可溶性IL2受容体(sIL2R)は別名可溶性CD25であり、IL2aRが遊離したものを測定している。そもそもIL2Rは普段はβ鎖(CD122)、γ鎖(CD132)の複合体で存在しているが、活性化されたT細胞ではα鎖(CD25)が発現しβ鎖(CD122)、γ鎖(CD132)とのヘテロ3量体を構成し親和性が増すようになる。
Engineering IL-2 for immunotherapy of autoimmunity and cancer | Nature Reviews Immunology
α鎖の一部が切断されsIL2Rとして日常臨床で測定している形となる。
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日常臨床ではsIL2Rはリンパ腫のスクリーニングに使用することが多い。
では
悪性リンパ腫 N=248と他の疾患(リンパ腫以外の固形がん N=50、自己免疫性疾患 N=18、感染症 N=32)比較するとリンパ腫で高く、aggressive Lymphomaでより高い傾向にあった。(sIL2R≧1946U/mLの時OR5.97でリンパ腫を示唆した。)
リンパ腫ではB、NK/T問わずsIL2Rの上昇を認めていたが特にATLが最もsIL2Rが高く、ATLを除いたNK/TとB細胞性リンパ腫を比較すると有意にNK/TでsIL2Rの上昇を認めた。
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しかしながら、T細胞でないB細胞性リンパ腫においてもsIL2Rの著名な上昇を認めているのはなぜだろうか?
2013年に広島大学より報告されたClinical Significance of sIL-2R Levels in B-Cell Lymphomas でその疑問の一説が述べられている。
まず、リンパ腫細胞のCD25の発現から調査している。
結果、DLBCLの半数の腫瘍細胞(B細胞)ではCD25の発現がなかったが、T細胞では100%発現していた。そのためB細胞由来のsIL2Rではなく、腫瘍細胞に浸潤したT細胞由来であると仮説をたて、腫瘍細胞あるいはbystanderから出るMMP9によるCD25の切断に注目した。
ATL細胞を使用しMMP9によるCD25切断作用を確認したのちに患者血液のMMP9濃度とsIL2R濃度の関連を調査した。
正の相関を示し、腫瘍組織に直接MMP9を染色したところ、
腫瘍細胞ではなくマクロファージにMMP9が陽性になり、bystanderである腫瘍関連マクロファージ(TAM)によるMMP9の産生がsIL2Rの上昇の原因である可能性を考えた。その後標本内のCD68陽性TAM数とsIL2Rに正の相関を認め、CD68+TMAとMMP9、sIL2Rの関連を強く疑う結果となった。
結論としてはB細胞リンパ腫の腫瘍細胞からのCD25ではなく浸潤しているT細胞のCD25がTAMが産生するMMP9により切除されsIL2Rが上昇している機序が考えられた。
そうなってくると先述の論文のようにリンパ腫以外のガンでも多少sIL2Rが上昇する機序も想像できるが、なぜ有意な差が出るほど上昇するかは不明である。
(コメント)
リンパ腫においてTAMの増加は予後不良因子であると認識していたのでsIL2Rが高値になると予後不良になるのも納得である。またsIL2R上昇の機序を考えるとあくまでスクリーニングの意味しか持たないなという印象がさらに強まった。