膠原病内科日記

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IgG4関連疾患のκ/λ ratioは増加することがあり、Mタンパク陽性とみられることもある。

IgG4関連疾患(IgG4RD)でfree light chain(FLC)の比が偏った症例を散見する。しかも電気泳動検査でMタンパクを考えるバンドを認めることもある。しかしながら骨髄はintactで恐る恐るIgG4RDとして加療してみる。

これはほっておいてもいいのだろうか?

 

今回IgG4RDでのFLCとMタンパクに関してまとめてみた。

 

<そもそもfree light chainとは?>

 

・抗体はHeavy chainとLight chainで構成されるが、Light chainはH chainより40%程度多く作られるため遊離したLight chainができる(free light chain)。
 
・健常人の正常値はκ型FLCは7.3[3.3-19.4]mg/Lでλ型FLCは12.7[5.7-26.3]mg/L。κ/λ ratioは0.26-1.65が正常範囲とされている。
・腎不全患者ではκ鎖のクリアランス不良からeGFR 45 ~ 59mL/min/1.73 m 2→0.46~2.62、30 ~ 44mL/min/1.73 m 2→0.48~3.38、< 30 mL/min/1.73 m 2→0.54~3.30と増加する。

Defining new reference intervals for serum free light chains in individuals with chronic kidney disease: Results of the iStopMM study | Blood Cancer Journal

・多発性骨髄腫、リンパ腫ではモノクローナルな抗体産生が起こり、一方のみのFLCが増加、κ/λ ratioが開大する。

 

<IgG4RDにおけるκ/λ ratio>

今までに3つの研究
16人のIgG4RD患者
Mタンパクを有する患者なし。

 


腎不全のないIgG4RD患者のうち5/12(43%)は1.65より高値であった(1.25~5.11)

腎不全(eGFR<75)の患者は4人含まれ2人は3.01より高値であった(1.25 ~ 5.11)。治療に伴い比は正常化した。

 

Serum immunoglobulin free light chains and their association with clinical phenotypes, serology and activity in patients with IgG4-related disease - PMC

IgG4RD 52人 vs シェーグレン症候群(SS) 25人 vs サルコイドーシス 15人

28.9%でκ/λ ratioの上昇を認めた(1.33 0.35-3.92)。

表現型ごと違いはなし

腎機能悪化症例はよりκ/λ ratioに違いを認めた(腎機能障害のある患者11人)



Serum free light chain assessment in type 1 autoimmune pancreatitis

AIPにフォーカスした研究

37人のAIP患者→1.43 (0.84-3.24)・・・割合は不明

<κ/λが大きくなるメカニズムの推測>

IgG1ではκ/λの発現に偏りがあり2.4:1の比だが、IgG4は8:1とκに大きく偏っている
リアランス不良だけでは説明できない。
 

<Mタンパク陽性のメカニズムは?>

上記のように偽κ増加を呈し、SPEPではMピークの様に見えることもある。
また電気泳動でもIgG4は幅がせまく陽性になるためG4が多いとMバンドの様に見えることもある。

https://academic.oup.com/ajcp/article/142/1/76/1761316

 

(感想)

IgG4RDと多発性骨髄腫の鑑別が問題になったときは基本に立ち帰り、κやλの値やSEPEやMバンドの形状をきちんと見る必要がある(検査技師が判断している場合が多いと思うので)。またMMが捕まらなくても治療でκ/λはよくなるのでフォローしていくのも重要だろう。